わが家の子どもたち3人がすっかりお世話になった保育園「多気の杜ゆたか園」。そのすぐ隣には、多気町クリスタルタウンの豊かな自然が残る「クリスタルの森」が広がっています。
ある春の日、保育園のお迎え帰りに子どもたちから「どうしても森に寄っていきたい!」と強いリクエストがあり、久しぶりに散策してみることにしました。ふとした寄り道から始まった、春の植物観察と思いがけない地域の素敵な発見についての記録です。
01. 保育園帰りの寄り道|春の「クリスタルの森」と裏山の花々
この日は黄砂で少し空がかすみ、花粉も多く飛んでいるとの予報でしたが、森の中へ足を踏み入れると、春らしい柔らかな光とたくさんの花々が迎えてくれました。


白く凛とした花を咲かせるコブシに、鮮やかなピンク色が目を引くミツバツツジ。そしてソメイヨシノも咲き誇り、森全体が春の訪れを喜んでいるかのような賑やかさです。


子どもたちの足取りに引かれるまま、保育園の裏山にも1年ぶりくらいに登ってみました。そこでは、ふわふわとした黄色いミモザの花が春の空に映えてとても綺麗でした。日々の慌ただしさのなかでも、こうして子どもたちと同じ目線で季節の移ろいを確かめる時間は、気持ちをすっとリセットしてくれます。
02. はらっぱ畑の発見|「これ、ほんとにブロッコリー?」から始まる観察
クリスタルの森の一角を歩いていると、開けた「はらっぱ畑」を見つけました。そういえば以前、子どもが保育園のお散歩でここを訪れた際、「畑でブロッコリーをいただいたよ!」と嬉しそうに話してくれたのを思い出しました。


畑を見渡すと、一面に黄色い菜花のような花が咲いています。「これがブロッコリーの花だよ」と聞きつつも、根元のあたりを覗き込んでみると、普段スーパーや食卓で見慣れているあの緑色のブロッコリーの姿が見当たりません。正直なところ、最初は「ほんとにこれがブロッコリーなの?!」と半信半疑でした。
実は、私たちが普段食べているブロッコリーのモコモコとした緑色の部分は、たくさんの「つぼみ(花蕾)」が集まったもの。収穫せずにそのまま春を迎えると、つぼみが一つひとつ開いて、キャベツや菜の花と同じ「アブラナ科」特有の黄色い十字の花を咲かせます。
いつも食卓で目にしている姿と、畑で花を咲かせて種を残そうとする本来の植物の姿。「図鑑や言葉としての知識」と「目の前のリアルな自然」が結びつく瞬間は、子どもにとっても大人にとっても、生きた学びの原点だと感じます。
03. 「たき土力の会」の土づくり|世界が認めた土壌微生物とバイオ炭の力
そんな「はらっぱ畑」の脇に、一枚の看板が掲げられていました。管理されているのは「三重県多気町 土力(どりょく)の会」の皆さんです。

家に帰ってから何気なくこの「たき土力の会」について調べてみたのですが、実は驚くほど素晴らしい取り組みをされている農家さんでした。
- POINT 01 // 世界が認めた「土壌微生物」とバイオ炭の土づくり
- 2015年に開催された「世界土壌微生物オリンピック」で見事銀メダルを受賞。バイオ炭(炭の微細な穴を微生物の住処にする技術)を用いた独自の土づくりを実践されており、日本国内だけでなく海外からもその技術を学びに研修生が訪れています。
- POINT 02 // 生産者と消費者が支え合う「CSA(地域支援型農業)」
- 和食育協会の提携農家として、新しい農業モデルであるCSA(Community Supported Agriculture)を実践されています。また、有機農法で栽培された旬の野菜セットのインターネット販売や、多気町のふるさと納税を通じた「フルーツトマト」の提供なども行われています(詳細は和食育協会「三重県多気町 土力の会」紹介ページやふるさと納税ページをご覧ください)。
- POINT 03 // 日本の食料自給率と「未来の食卓」を守る挑戦
- 日本の食料自給率(カロリーベース)は約38%と、先進国のなかでも低い水準にあります。国産食材の生産・消費拡大を通じて、日本の農業を守り、安心でおいしい日本食を未来の子どもたちへ残していく活動を続けられています。
消費者自身が農業運営に参加し、生産者の支援をすることで、相互の信頼関係のもと、消費者は新鮮なこだわり野菜を受け取ることができる、新しい農業モデル
和食育協会(https://www.washokuiku.jp/)
ただ野菜を作って売るだけでなく、「土」という根本の環境から整え、食べる人と作る人の信頼関係を育んでいく姿勢に、深い感銘を受けました。
04. 農業も教育も「見えない土台」から|未来の子どもたちへ手渡すもの
今回、土力の会さんの取り組みを知って強く心を動かされたのは、そこに掲げられていた「未来を創造しよう」というメッセージが、私たちの教室の理念とも深く重なっていたからです。
美味しい野菜や美しい花を育てようとするとき、私たちはつい「地上に見えている葉や実」ばかりに目を奪われがちです。けれど、本当に大切なのは、目には見えない地面の下――無数の微生物が息づき、根がしっかりと養分を吸収できる「豊かな土壌(土台)」を時間をかけて耕すことです。
これは、子どもたちの学びにおいてもまったく同じだと感じます。テストの点数や高度な問題演習という「花や実」を急いで求める前に、まずは日々の対話や読書、身近な自然への「なぜだろう?」という好奇心、そして言葉や基礎の型という「見えない思考の土壌」を丁寧に耕してあげること。根っこさえ深く張っていれば、子どもたちは自らの力でぐんぐんと枝葉を伸ばしていきます。
子どもたちと手をつないで歩いた保育園帰りの小さな寄り道から、同じ多気町の地で「未来の子どもたちのため」に土壌を耕し続ける方々の情熱に出会えたこと、本当に嬉しく思いました。私たちも教育という畑のなかで、子どもたちの未来を支える豊かな土壌を、一歩ずつ丁寧に育てていきたいと思います。
CULTIVATING THE ROOTS // ENGINEERING & ROBOTICS LAB
目に見える「結果」の前に、揺るぎない「思考の土壌」を耕す。
豊かな土壌から強い植物が育つように、当ラボでは小・中学生の段階から「言葉の解像度」「基礎の型」「実体験を通じた好奇心」という見えない土台づくりを何よりも大切にしています。私たちが掲げる教育理念と、少人数制ラボの学習環境については以下よりご覧ください。
