自宅の庭にあるハナミズキが、今年も真っ赤に紅葉しています。3本あるうちの1本はもうすでに葉を落としてしまいましたが、残る2本がいまちょうど見頃を迎えています。

夕方、外が暗くなってくると、庭のセンサーライトが反応して明かりが灯ります。その光は真っ赤なハナミズキを照らし、昼間とはまた違う、より一層の輝きを見せてくれます。ほんの束の間のライトアップといったところでしょうか。この時分、紅葉した遠くの山々もさぞ美しいことでしょう。
01. 「山」に関する四季の季語:自然を命あるものとして捉える感性
そういえば先日、俳句の季語(歳時記)を眺めていたとき、「山」に関する美しい季語が季節ごとに並んでいるのを見つけましたのでご紹介したいと思います。
- SPRING // 春の季語:「山笑う(やまわらう)」
- 草木が一斉に芽吹き、春の山全体が明るく華やぎ始める様子を、穏やかな笑顔にたとえた表現。
- SUMMER // 夏の季語:「山滴る(やましたたる)」「山茂る(やましげる)」
- 夏の木々が青々と深く生い茂り、緑の色そのものが滴り落ちそうなほど瑞々しい様子。
- AUTUMN // 秋の季語:「山装う(やまよそおう)」「山飾る」「山彩る」
- 紅葉によって山全体が赤や黄色に美しく彩られる様子を、華やかな衣装を身にまとう姿にたとえた表現。
- WINTER // 冬の季語:「山眠る(やまねむる)」
- 木々が葉を落とし、静まり返って次の春をじっと待っている冬の山の姿を、静かな眠りにたとえた表現。
もともとは中国の古い山水画の言葉に由来するものですが、どの表現も季節の山の佇まいを見事に言い得ていますよね。特に秋から冬にかけての「山装う」から「山眠る」への移ろいは本当に素晴らしく、自然をひとりの人間のように温かく見つめてきた日本人の感性の豊かさに改めて感激しました。
02. 「山装う」と「山が燃える」:言葉が映し出すニュアンスの違い
それにしても、山が真っ赤に燃えたように色づく様子を、秋の季語として「山燃える(あるいは山燃ゆ)」とは言わないものなのですね。
「山が燃える」というフレーズで思い浮かぶのが、石川さゆりさんの名曲『天城越え』(作詞:吉岡治)にある次の一節です。
舞い上がり 揺れおちる 肩の向こうに あなた… 山が燃える
『天城越え』(作詞:吉岡治 / 歌:石川さゆり 1986年)
この「山が燃える」とは、歌の舞台である伊豆半島・天城山の紅葉を歌ったものなのか、それとも情熱的な恋の歌ゆえに激しい感情の揺れをたとえたものなのか……。おそらくその両方が重ね合わされているのでしょうが、静かに秋を彩る「山装う」と比べると、「山が燃える」には圧倒的な熱量が感じられます。もし新しく季語に追加できる機会があれば、「山燃える」もぜひ提案してみたいものです。
03. 歳時記のなかの思いがけない出会い:「納豆汁」
そして、同じように季語を眺めていたときに見つけて思わず二度見してしまったのが、「納豆汁」という言葉です!これは一体どんなものなのでしょうか?
納豆汁(なっとうじる)とは、納豆を加えた味噌汁の一種である。
フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』より引用
材料は、納豆、味噌、豆腐、油揚げ、野菜類などで、納豆は挽き割り納豆がよく用いられる。
俳句における「冬の季語」となっている。
東北地方などで古くから親しまれている郷土料理で、すりつぶした納豆やひきわり納豆を入れたお味噌汁が、立派な「冬の季語」になっているのですね。私はまだ飲んだことがないのでその味は未知の世界ですが、普段時々食べる「納豆うどん」がサラッとしていて美味しいことを思えば、意外と「納豆汁」も体が温まって美味しいのかもしれません。この冬、ぜひ一度挑戦してみたいと思います(その感想はまたの機会に!)。
- POINT 01 // 言葉(語彙)を知ることは、風景の解像度を上げること
- ただ「秋の山がきれいだな」と見るだけでなく、「山装う」「山眠る」といった比喩表現を知っていることで、日常の景色の見え方や文章の読み取り方がぐっと深まります。
- POINT 02 // 辞書や歳時記は「未知の文化への入り口」
- ひとつの言葉をきっかけにページをめくると、「納豆汁」のようなまだ知らない地域の食文化や歴史に次々と出会うことができます。
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