助動詞「can」に潜む「可能」と「可能性」のダブルミーニング|プログレスのスパイラル設計とStingの名曲『Every Breath You Take』の韻(Rhyming)

英語を学ぶなかで、私たちは助動詞「can」の意味を最初に「〜できる(可能)」と習いましたね。
先日の授業の中で、ある一文の解釈をしたときのことです。

“Telling lies can cause a lot of problems.”

これを「嘘をつくことは、多くの問題を引き起こすことができる」としてしまうと、文の真の意味が伝わりません。「can」にはどういう意味があるのか、生徒と一緒に深掘りしてみました。

この文に出てくる「can」は、能力的に「〜ができる」と言っているのではありません。これは、客観的な事実や推量を表す「可能性(〜があり得る、〜することもある)」という意味で使われています。となると、自然な訳は以下のようになりますね。

「嘘をつくことは、多くの問題を引き起こすことがある」

英語教材『プログレス(PROGRESS IN ENGLISH)』のScene 13あたりまで進むと、こうした直訳だけでは通用しない、さらにはネイティブをも惑わせる知的な「ダブルミーニング(二重の意味)」の世界が一気に広がっていきます。今回は、日常会話や映画、歴史的スローガン、そして名曲に隠された「can」の2面性と、プログレス特有の「スパイラル設計」の仕組みを紐解いていきましょう。

01. 解釈が分かれる!日常に潜む「can」のダブルミーニング3つの例

日常会話やキャッチコピーにおいて、「can」は文脈や主語によって「可能」とも「可能性」とも取れる、判断の分かれやすい表現になります。

CASE 01 // 主語が「人」で、能力とも状況とも取れるケース
“He can run this marathon.”
・解釈A(可能):彼は体力的・練習量的に、このマラソンを走りきることができる。
・解釈B(可能性):スケジュールやコンディション的に、彼がこのマラソンに出場して走る可能性はある。
CASE 02 // 禁止やルールの文脈で、能力と許可が混ざるケース
“You can’t park your car here.”
・解釈A(不可能):物理的に狭い、または障害物があって車を停められない。
・解釈B(禁止):駐停車禁止エリアなので、ここに車を停めてはいけません。
CASE 03 // キャッチコピーやアドバイスでわざと曖昧にするケース
“This book can change your life.”
・解釈A(可能):この本には、あなたの人生を変える力(パワー)がある。
・解釈B(可能性):この本を読めば、あなたの人生が変わることもある。
(※「絶対に変わる(will)」と言い切らないことで、広告としてのポジティブなアピールと客観的な含みを両立させています)

02. 世界を動かした!有名な「can」のダブルミーニング3つの例

さらに、映画のセリフや歴史的なスローガンでは、この2つの意味をあえて両立させることで、強烈なメッセージ性を持たせているものがあります。

SLOGAN 01 // 映画『ズートピア』のキャッチコピー
“Anyone can be anything!”(誰だって、何にでもなれる!)
・意味①(可能):「誰だって、何にでもなる能力・力がある」という子どもたちへの力強い応援。
・意味②(可能性):「どんな人(動物)にだって、どんなものにでもなる可能性が開かれている」という映画の社会的テーマの象徴。
SLOGAN 02 // オバマ元大統領の選挙スローガン
“Yes, We Can.”(私たちならできる / それはあり得る)
・意味①(可能):「私たちは変革を成し遂げることができる」という強い意志の表明。
・意味②(可能性):「私たちの未来には、変革の可能性が十分にある」という客観的な事実の提示。
(※「絶対に変わる(will)」と言い切らないことで、有権者に現実的な可能性を突きつけた知的なフレーズです)
SLOGAN 03 // アメリカの有名な防犯スローガン
“Crime can’t win.”(犯罪は勝てない)
・意味①(不可能):「正義の力が強いから、物理的に勝つことは不可能だ」という悪人への突き放し。
・意味②(禁止・強い否定):「法律や社会のルールとして、犯罪が勝つことは断じて許されない」という強い社会の意志。

03. Stingの名曲『Every Breath You Take』——驚異の押韻(Rhyming)と潜む怖さ

助動詞「can」のダブルミーニングとは少し毛色が異なりますが、音楽の世界にも「言葉の意味が180度ひっくり返る」有名なダブルミーニング(風刺)が存在します。その筆頭が、Sting(スティング)率いるThe Policeの名曲『Every Breath You Take(邦題:見つめていたい)』です。

歌詞にある「君のすべての呼吸、すべての動きを、僕は見守っている(I’ll be watching you)」や「君がいなくなってから、僕がどんな気持ちか君にはわからないだろう(Oh, can’t you see / You belong to me)」というフレーズは、一見すると最高にロマンチックな純愛ラブソングに聞こえます。そのため結婚式の定番曲としても愛されていますが、実は作詞したスティングいわく、この曲の真の意味は「嫉妬に狂った男が相手を24時間監視しているストーカーの歌」なのです。

美しいメロディの裏に潜む「支配と執着」というもう一つの意味。ただ、そもそもこの歌は英語のRhyming(ライミング=脚韻:take / make / break / fake や day / say / play / stay など)が信じられないほど素晴らしく完璧に組まれているため、たとえ描かれている目線がストーカーであったとしても、なかなかこんな名曲は作れないだろうと感じます。言葉の裏に隠された意図と「音の設計」を知ると、ゾッとするような深みと英語表現の芸術性が見えてきます。

04. プログレスの「スパイラル設計」と、言葉の「裏の顔」を楽しむ学び

発端となった “Telling lies can cause a lot of problems.” のような、文脈によって意味がガラリと変わる「ひねったcan(〜のはずがない、〜があり得る)」は、プログレスのカリキュラムにおいて非常に重要な役割を持っています。

プログレスは「一度学んだ文法を、忘れた頃に何度も、形を変えて登場させる」というスパイラル設計(螺旋階段のような構造)をとっています。

STEP 01 // Book 1(中1相当):基本の「可能」の徹底
まずは「〜できる(可能)」という基本の can を完璧に使いこなせるようにします。
STEP 02 // Book 2 前半:会話の中に「可能性・推量」の種をまく
ひっそりと “It can’t be true.(本当のはずがない)” という「可能性・推量」の can’t を新出単語や会話のリアクション(LookやScene)の中に混ぜて種をまきます。
STEP 03 // Book 2 後半(Scene 13以降):長文読解の中で応用力を試す
何の説明もなく、長文(Read)の中に「〜することもある」「〜のはずがない」という表現を連発させ、前後の文脈から判断する読解力と応用力を試します。
STEP 04 // Book 3(高校英語):過去の事柄に対する推量へ進化
さらに進化させ、“He cannot have said such a thing.(彼がそんなことを言ったはずがない)” という、過去の事柄に対する推量(can’t + have + 過去分詞)へとステップアップします。

一度習って終わりではなく、学年が上がるごとに「あのとき習ったcanは、実はこういう意味でも使われるんだ」と、知識が立体的に繋がっていくのがプログレスの面白さであり、受験英語に強いと言われる所以です。

嘘(Telling lies)が問題を引き起こす「可能性」を伝えるcan。
Stingの歌のように、そしてプログレスの教科書が仕掛けるスパイラル設計のように、英語は先に進めば進むほど、直訳だけでは見えてこない「裏の意味」や「解釈の2面性」が顔を出します。今やっているScene 13、あるいはそれ以降のレッスンでも、登場人物たちのセリフに出てくる「can」や「can’t」に出合ったら、それは本当に「できる」なのか、それとも「あり得る(はずがない)」なのか、ぜひ立ち止まって深読みしてみてください。その一歩が、あなたの英語の視界をよりクリアにしてくれるはずです。

SPIRAL ENGLISH CURRICULUM // ENGINEERING & ROBOTICS LAB

1対1の直訳暗記から卒業し、文脈と構造から「生きた英語」を読み解く。

当ラボ(LOGIC LAB)では、一度学んだ文法事項を螺旋階段のように深めていくスパイラル型の英語指導を通じ、大学入試の長文や生きた英語表現にも揺るがない本質的な読解力を育てています。6科目統合カリキュラムの詳細や、言葉と教養の世界を広げる推薦図書・映画データベースについては以下よりご覧ください。