プリウスに見る「コネクテッドカー」の実装と自動車整備の構造転換|CASEとSDVが変える「分解整備」から「特定整備」へのシフト

MOBILITY ARCHITECTURE // FROM “CONNECTED” TO “SDV”

スバルの「SDV(ソフトウェア定義型自動車)」を支える通信インフラと整備の変革

前回のコラムでは、スバルの次世代戦略を例に「SDV(Software Defined Vehicle:ソフトウェアによって機能や安全制御が定義・更新される車)」について考察しました。そのSDVが成立するための大前提となるのが、車両が常時インターネットと繋がる「コネクテッド(Connected)サービス」です。本稿では、トヨタ・プリウスの車載通信システムを起点に、モビリティのIoT化と「分解整備から特定整備への構造転換」を紐解きます。

ちょうど新車のトヨタ・プリウスが納車のため入っていたので、少しシステムをチェックしてみました。
基本的な内容は現代のハイブリッド車そのものなのですが、今回は自動車業界の変革指針である「CASE」のC、すなわち「コネクテッド(Connected)」に触れてみようと思います。

新車のトヨタ・プリウス
チェックを行ったトヨタ・プリウス

01. 「CASE」とは何か?—— ハード製造からモビリティサービスへの転換

そもそも「CASE(ケース)」とは何なのか?というと、以下の4つの技術領域の頭文字をとったものです。

C // Connected(コネクテッド:常時ネットワーク接続)
車載通信機を介して車両がクラウドと常時接続され、緊急通報、遠隔診断、さらにはSDVにおけるソフトウェア更新(OTA)を実現する基盤技術。
A // Autonomous / Automated(自動運転・先進運転支援)
カメラ・レーダー・センサー群とソフトウェア制御によって、ドライバーの認知・判断・操作を支援・自動化する技術。
S // Shared(シェアリング・サービス化)
車を単なる「所有物」としてだけでなく、社会全体の移動を最適化するシェアリングやMaaS(Mobility as a Service)として活用する概念。
E // Electric(電動化)
ガソリンエンジンからハイブリッド・EV等のモーター駆動へとシフトし、環境性能と電子制御との親和性を極限まで高める技術。

この4つのテーマを実現することで、従来の「自動車を作って売るメーカー」から、「個々のモビリティをソフトウェアと通信で最適化するモビリティサービス」へと転換し、新たな社会インフラを作り上げていこうという指針であると思います。

02. プリウスの「ヘルプネット」に見る車載IoTと常時接続の日常化

そして今回のテーマである「C」は、最近よく耳にするコネクテッドカーやコネクテッドサービスがそれにあたります。プリウスにもそのサービスは当然付加されており、ルームランプ付近に装着されている「ヘルプネット」もその代表的な機能の一部です。

プリウスのルームランプ付近に装着されたヘルプネット(SOSボタン)
エアバッグと連動する緊急通報システム「ヘルプネット」

ヘルプネットはエアバッグの展開センサーと連動しており、重大な事故の際、乗員が意識を失っていても自動的にオペレーターへ通報し、救急車両を配車してくれるサービスです。
最近、自動車保険会社から提供される「通信機能付きドライブレコーダー」もよく似たサービスですよね(ドライブレコーダー内蔵のGセンサーで激しい揺れや衝撃を感知したら、自動的に保険会社へ連絡がいく仕組みです)。

いずれにしても、IoT(車がインターネットにつながる、ドラレコがインターネットにつながる構造)が猛烈に進んでいるのが分かります。5年も経てば、「車がインターネットにつながって(コネクテッドして)いない状態」というのは、まるで「スマホがインターネットにつながっていないのと同じ感覚」になると思います。

03. 自動車整備の激変:「分解整備」から「特定整備」と遠隔テレメトリーへ

そして、車が常時ネットワークに繋がりソフトウェアで制御されるようになると、それに付随して「自動車整備」も根本から変化していきます。

自動運転、電気自動車というキーワードから想像すると(もはや想像ではなく現実なのですが)、機械的な部品の簡素化(※技術的に落ちるわけではなく、構成モジュールがシンプルになるという意味です)と、ミリ波レーダー、カメラ、各種センサーの多用によって、整備の主軸は従来の「分解整備」から「特定整備(電子制御装置整備)」へと移行していきます。

SHIFT 01 // 「分解整備」から「特定整備(レーダー・カメラの精密点検)」へ
特定整備とは何かというと、「事故を起こさないためのレーダー、カメラ、センサーのチェック(校正・整備)」だと考えれば簡単です。社会の中で事故を未然に防ぐために最も重要とされるのはこうした電子制御システムになってきており、自動運転やSDVが進めば進むほどこの傾向は強くなります。車検そのものはなくならないでしょうが、その中身は大きく変わり、「従来の機械的な分解整備は条件付き(新車から5年以内・10万km以内など)で簡略・免除される一方、特定整備に代表されるレーダーやカメラの点検は厳格に実施する」といった形へシフトしていくと考えられます。
SHIFT 02 // コネクテッドサービスによる「システムエラーの常時遠隔監視」
日常的によく出るシステムエラー(チェックランプの点灯やセンサーの異常値)も、インターネット(コネクテッドサービス)を介してクラウド側で常にリアルタイム監視できるようになります。緊急を要するトラブルであれば、車検を待たずともその都度システムからユーザーへ直接連絡・アラートが入る仕組みへと変わっていきます。

少し想像しただけでも、自動車を取り巻く環境は激変ですよね(笑)。
本当は、ここからさらに広がる「MaaS(モビリティ・アズ・ア・サービス)」や、自動運転の空間認識の要となるレーザーセンサー「LiDAR(ライダー)」の仕組みなんかにも触れたいのですが、それはまた次回ということで。

ENGINEERING & TELEMETRY SYSTEM // ENGINEERING & ROBOTICS LAB

実社会のテクノロジー構造と、学習の「常時テレメトリー管制」を繋ぐラボ

コネクテッドカーがセンサーと通信で車両の状態をリアルタイムに把握し事故を未然に防ぐように、当ラボでも独自開発の学習管制システム『LAB DECK』を用いて、生徒一人ひとりの学習進捗と「思考の停止位置(バグ)」をリアルタイムに可視化・デバッグしています。