マイケル・ベイ監督によるNetflixオリジナル映画『6アンダーグラウンド』。緻密なミッション遂行とスピード感あふれる展開が魅力的なアクション作品ですが、この映画を「組織とチームの構造設計(アーキテクチャ)」という視点で観ると、極めて興味深い新旧の対比が描かれていることに気づかされます。
今回は、劇中に登場する2人の人物のスタンスの違いと、Googleの人材育成・組織開発の知見を掛け合わせながら、子供たちが最も高いパフォーマンスを発揮できる「学習環境(チーム)のあり方」について考察します。
01. コードネーム「ワン」と「セブン」に見る2つの組織構造
劇中のチームでは、メンバー全員が本名を伏せ、数字のコードネームで呼ばれています。ここで対照的な思考回路を見せるのが、リーダーである「ワン」と、新たに加わった「セブン」です。
- TYPE “ONE” // リーダー「ワン」の設計思想(機能分離・非干渉型)
- 組織内のメンバーは互いの名前も過去も知らない方が良い。それぞれの内面や感情に触れる必要はなく、とにかく自分に与えられた役割(タスク)だけを機械的にこなしていけば良いというスタンス。
- TYPE “SEVEN” // 新参者「セブン」の設計思想(相互理解・協調型)
- メンバー同士は名前を明かし、互いの状態や背景をよく知るべきである。もし他のメンバーが窮地に陥っていたら、自分の役割の枠を超えて助け合う必要があるというスタンス。
一見すると、「ワン」のような徹底した機能分担(ドライな関係)の方が無駄がなく合理的に見えるかもしれません。しかし、現実のプロジェクトや学習の現場において、この「互いの内面や弱みを開示しない構造」は致命的なバグを引き起こします。
自分はどんなことで悩んでいるのか、求めているのは何か。どんな価値観を持っているのか。それを開示しない人間関係を「ビジネスライク」だと考えている人もいるでしょう。
ピョートル・フェリークス・グジバチ『Google流 疲れない働き方』(SBクリエイティブ 2018年)pp.150
しかし、「仕事だから本音を言わない」「会社では感情を見せない」というのはビジネスにおいては致命的に危険なことです。
信頼できない人間関係においては、コミュニケーションがスムーズにいかず、情報が流れません。不都合な情報を隠したり、偽装したり、ありとあらゆるデタラメが出てくる可能性があります。
何を信用すればよいか分からない環境では、「今どこでつまずいているか(不都合な情報・エラー)」が隠蔽されるようになり、結果として非常に疲弊する、非効率な組織になってしまうのです。
02. 他者に開かれたマインドフルネスと、3つの英語表現の解像度
スピードと高い成果が要求される環境において、どうすれば効果的にチームを運営できるのか。その違いは、「自分だけに向けたマインドフルネス(ワン)」と「他者に開かれたマインドフルネス(セブン)」にあります。
同書では、感情を含めて相手の状態を感じ、理解し、働きかけるステップとして、以下の3つの英単語の明確な違いが示されています。
「Sympathy」。これは困っている人を見たら、「可哀想だな」「気の毒だな」と感じることです。英語でいうと、I feel for you. です。
ピョートル・フェリークス・グジバチ『Google流 疲れない働き方』(SBクリエイティブ 2018年)pp.148-149
「Empathy」は、相手と同じ立場に自分を置いて、感情を共有することです。英語では、I understand you. となるでしょうか。
「Compassion」です。これは単に共感するのではなく、相手を助けてあげたい、そういう温かい気持ちを持つことを指します。英語でいうと、I want to help you. です。
ただ外側から気の毒がる(Sympathy)のではなく、相手の視座に立ってどこで苦しんでいるのかを構造的に理解し(Empathy:I understand you.)、具体的な解決のために手を差し伸べる(Compassion:I want to help you.)。このプロセスは、そのまま理想的な教育・指導のプロセスと完全に一致します。
03. 「疲弊する環境」と「自走・成長する環境」の決定的な違い
この「他者に開かれたマインドフルネス(心理的安全性)」が機能している環境と、そうでない環境の特徴を比較すると、以下のような明確な違いが浮かび上がります。
EXHAUSTING // 疲弊し停滞する環境
「わからない」が隠蔽される構造
- 周囲への忖度が多く、本音を言わない
- リスクを取れるだけの信頼感がない
- 役割も期待されていることも曖昧
- エラーが起きると「誰かのせい」にする
PRODUCTIVE // 疲れず成長する環境
「エラー」を即座にデバッグできる構造
- 「わからないこと」は「わからない」と言える
- 本音や自分の仮説を恐れずに言える
- リスクを取って難問に挑める信頼感がある
- 失敗を開示し、システムとして次に繋げられる
04. なぜ当ラボは「1学年6名限定」の少人数マイスター制なのか
この組織の法則は、そのまま「学習塾という空間の設計」に当てはまります。
多くの生徒が一斉に黒板を向いて座る大人数の環境では、どうしても「こんな基本的なことを質問したら恥ずかしい」「間違った答えを言いたくない」という心理的ブロックが働き、生徒は「わからないこと(思考のバグ)」を隠して、表面的な解答の丸暗記で取り繕うようになります。これは本物の学力を育てる上で最も危険な状態です。
当ラボが「1学年6名限定」という少人数マイスター制を貫いている最大の理由は、教室を「『わからない』と100%安心して言える空間」にするためです。講師が生徒一人ひとりの思考の現在地を深く理解し(Empathy)、つまずきの解消へと伴走する(Compassion)。失敗やエラーを罰するのではなく、「どこに論理のズレがあったのか」を冷静に特定して次につなげる。この信頼のインフラがあるからこそ、子供たちは無駄に疲弊することなく、自身の知性を極限まで伸ばしていくことができるのです。
CORE ARCHITECTURE_03 // ENGINEERING & ROBOTICS LAB
エラー(失敗)を恐れず、自ら解決する力を鍛える少人数環境
当ラボが掲げる「4つの設計思想(ARCHITECTURE)」や、1学年6名限定のマイスター制指導システムの詳細については、以下のマスタードキュメントをご覧ください。
